この記事でわかること

簡易課税制度の事業区分は第1種から第6種までの6つで、みなし仕入率はそれぞれ90%・80%・70%・60%・50%・40%と定められていますが、この区分は事業者ごとに一つ決まるものではなく課税資産の譲渡等ごとに判定するため、同じ会社であっても売った物やサービスが違えば適用される区分は別々になります。本記事は、国税庁タックスアンサーNo.6509と関連する質疑応答事例を判定の順番どおりに並べ直したうえで、決算実務でつまずきやすい箇所まで含めて整理したものです。

なお本記事は国税庁が公表している原文の構造化であり、独自の解釈や税務判断は含んでいませんので、個別の取引への当てはめについては所轄税務署または税理士にご確認ください。

まず全体像:6区分とみなし仕入率

下の表は No.6509の記載に沿っています。

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事業区分 みなし仕入率 該当する事業(原文の要旨)
第1種事業 90% 卸売業。購入した商品を性質・形状を変えずに他の事業者へ販売する事業
第2種事業 80% 小売業(性質・形状を変えずに販売する事業で第1種以外)、農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡に係る事業
第3種事業 70% 農林漁業(飲食料品の譲渡を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業。第1種・第2種に当たるものと、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く
第4種事業 60% 第1・2・3・5・6種のどれにも当たらない事業。飲食店業など。第3種から除かれる加工賃等もここ
第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く)。第1〜3種に当たるものを除く
第6種事業 40% 不動産業

判定は6つの質問で絞れる

国税庁は質疑応答事例「簡易課税の事業区分について(フローチャート)」で判定の目安を図示しています。その順序を、文章の分岐に置き換えました。1つの取引ごとに、上から順に当てはめます。

事業区分を1つの取引ごとに順に当てはめる
Q1購入した商品を、性質・形状を変更しないで販売するものか

実務でつまずくのは、判定そのものではない

この6問は1件の取引を見れば答えが出るように組まれていますが、実務で本当に困るのはそこではなく、決算のときに1件ずつ見られる形でデータが残っていないという点のほうです。

たとえば店舗を持つ小売業で手元にレジの日計表しかない場合、物販は第2種、店内で提供した飲食は第4種と数字の上では別区分になるにもかかわらず、日計表のほうは「売上高」で一本にまとまっていることが多く、区分ごとの課税売上高を出せないまま申告期限が近づいてくる、という形になりがちです。

これが効いてくるのは、区分できていない場合には、その区分のうち最も低いみなし仕入率が原則として適用されるためで、第2種(80%)と第4種(60%)が混ざった状態で区分できなければ全部が60%で計算されることになります。したがって判定の知識を詰めるより先に、レジや販売管理の側で区分が取れる形になっているかを確認したほうが早いという場面が実際には多いはずです。

もうひとつ、期中はまったく問題にならないのに決算で急に出てくるのが固定資産の売却で、たとえば営業車を1台手放した場合、本業が第5種のサービス業であってもこの売却部分だけは第4種として扱われます。1件あたりの金額が大きくなりやすいぶん、見落とすとそのまま納税額に効いてきます。

直感と結論がずれやすい6つ

質疑応答事例のうち、フローの分岐と答えが噛み合いにくいものを抜き出しました。

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論点 原文が示す取扱い 区分
製造問屋 自己の計算で原材料等を購入し、指示した条件で下請加工させて完成品にする事業 第3種
建設工事の元請 請け負った工事の全部を下請に施工させる元請 第3種
新聞・書籍等の発行、出版 発行・出版を行う事業 第3種
天然水の瓶詰販売 天然水を採取して瓶詰等し、人の飲用に販売する事業 第3種
食料品小売店の軽微な加工 購入した食料品に、その店舗で一般的に行われる軽微な加工をして同じ店舗で売る場合 第2種
ホテル内のレストラン・バー 宿泊者以外も使えて、その場で精算できる施設での飲食物の提供 飲食店業として第5種から除外(第4種)

最後の行には続きがあります。No.6509 は「1泊2食付で2万円」のように食事代込みで宿泊料金が決まっている場合は、その全額が第5種の対価だとしています。同じホテルの同じ夕食でも、料金表の書き方が変わると区分が動く。ここは覚えるというより、料金体系の資料を先に見るところです。

みなし仕入率を使った計算

区分が決まれば、あとは課税標準額に対する消費税額にみなし仕入率を掛けることで仕入控除税額が出ます。

課税売上げに係る消費税額が100万円で区分が第3種(70%)であれば、仕入控除税額は100万円×70%=70万円となり、実際にいくら仕入れたかという事実はこの計算にいっさい入りません。仕入が少ない年ほど有利に働き、逆に設備投資をした年には不利に振れるという簡易課税の性質も、この計算構造から出てきます。

2種類以上の事業を行っている場合の原則は、区分ごとの消費税額にそれぞれのみなし仕入率を掛けて合計する方法です。特例として、1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占めるときの計算方法などがあります。制度全体の構造は事業区分とみなし仕入率の対応表に整理しました。

なお、インボイス発行事業者以外からの課税仕入れに係る経過措置(7・5・3割控除)は、令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、令和8年10月から2年間が70%、令和10年10月から2年間が50%、令和12年10月から1年間が30%、令和13年10月以降は控除できません。あわせて、一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)が年または事業年度で1億円(改正前10億円)を超える部分には適用できなくなりました。ただし簡易課税ではみなし仕入率で計算するため、この割合は使いません。7・5・3割控除は原則課税の話です。控除率の推移は経過措置のスケジュールにまとめています。

フローで答えが出ない場合

国税庁自身が、質疑応答事例の冒頭で「このフローチャートは、事業区分判定に当たっての目安です」と書いています。次の場合は目安を当てても結論が出ません。

ひとつは、1つの取引に資産の譲渡と役務の提供が混ざっているとき。質疑応答事例は、社会通念上の取引単位で判定したうえで、それぞれの対価が区分されているときは区分されたところにより種類を判定するとしています。区分されていないときの扱いは個別事情によります。

もうひとつは、大分類がそもそも一意に決まらない業態。製造小売と喫茶店の兼業、デパートのテナント、プロスポーツ選手、飲食店で徴しているサービス料。どれも個別の質疑応答事例が用意されているくらいには、判断が分かれます。

それから令和元年10月1日以後の農林漁業。飲食料品の譲渡を行う部分は第2種、それ以外は第3種で、同じ事業者の中で区分が割れます。

そもそも簡易課税を選べるかどうかは別の話です。制度の選択可否は原則課税と簡易課税の判定基準、納税義務の有無は基準期間・特定期間の数値要件をご覧ください。

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