この記事でわかること

設立まもない法人には基準期間がないため、消費税の納税義務は原則として免除される。ただし期首の資本金または出資の金額が1,000万円以上であれば設立1期目・2期目は課税事業者になり、1,000万円未満でも判定対象者の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超えるか売上金額等の合計額が50億円を超える場合は特定新規設立法人として免除されない。資本金は設立時に1回ではなく、1期目と2期目それぞれの期首で判定する。

本記事は国税庁 タックスアンサー No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」およびNo.6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」(いずれも確認日 2026年8月17日)の記載を判定の順序どおりに並べ直したものであり、独自の解釈や税務判断は含んでいない。自社の当てはめは所轄税務署または税理士に確認いただきたい。基準期間および特定期間そのものの数値要件は消費税の納税義務の判定基準に分けて整理している。本記事が扱うのは、その基準期間がまだ存在しない法人の判定である。

基準期間がない法人は、原則と3つの例外で決まる

法人の基準期間は原則として前々事業年度である。設立1期目・2期目にはこれが存在しないため、No.6531は「その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、消費税の納税義務が免除される」という原則がそのまま働くと整理している。根拠条文として同ページが挙げるのは消法2、9、9の2、10、11、12、12の2、12の3および消令20〜24である。

この原則から外れる事由は別々の条文に置かれている。判定は次の順で行う。

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見るもの 該当すると 根拠
1 その事業年度開始の日の資本金の額または出資の金額が1,000万円以上か 新設法人として課税事業者 消法12の2
2 1,000万円未満のとき、判定対象者の基準期間相当期間の課税売上高が5億円超、または売上金額等の合計額が50億円超か 特定新規設立法人として課税事業者 消法12の3
3 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるか 課税事業者 消法9の2
4 適格請求書発行事業者の登録を受けているか 課税事業者 消法9①括弧書

4つは順に見ていくもので、上から一つでも該当すれば以降を見るまでもなく課税事業者になる。No.6531はこのほか、相続により事業を承継した年、合併・分割があった事業年度についても免除されない場合があるとしている(消法10、11、12)。

資本金1,000万円は「設立時」ではなく期首ごとに見る

No.6503は新設法人を「その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人」と定義している。判定時点はその事業年度開始の日、すなわち期首である。

同ページは「設立1期目または設立2期目のそれぞれの期首における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である場合には、その設立1期目または設立2期目は課税事業者となります」と書いている。1期目と2期目は別々に判定する。設立時の払込みが1,000万円未満であっても、1期目の期中に増資して2期目の期首時点で1,000万円以上になっていれば、2期目は課税事業者になる。逆に1期目の期首が1,000万円以上、2期目の期首までに減資して1,000万円未満になっていれば、2期目はこの条文では課税事業者にならない。

基準になるのは資本金の額または出資の金額であり、資本準備金は含まれない。1,000万円「以上」なので、ちょうど1,000万円は該当する側である。

資本金1,000万円未満でも外れる場合 — 特定新規設立法人

資本金要件だけであれば、大規模な企業グループが資本金999万円の子会社を作れば2期分の免除を受けられることになる。これを塞ぐのが消法12の3の特定新規設立法人である。

No.6503は、資本金1,000万円未満の法人のうち、判定対象者の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超える場合、または売上金額等の合計額が50億円を超える場合に該当すると納税義務は免除されないとしている。後者の50億円の枝は令和6年10月1日以後に適用される。

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判定対象者について見る指標 金額 適用時期
基準期間相当期間における課税売上高 5億円超
売上金額等の合計額 50億円超 令和6年10月1日以後

2つは択一ではない。いずれかに当たれば特定新規設立法人になる。見る対象が新設法人自身ではなく判定対象者、すなわちその法人を支配している側である点が、資本金要件との違いである。

いったん課税事業者になった後に免税へ戻れなくなる場合

新設法人または特定新規設立法人に該当して課税事業者となっている期間中に、調整対象固定資産を取得すると、その後の課税期間の扱いが変わる。

No.6503は、調整対象固定資産を「一の取引単位の価額(消費税および地方消費税に相当する額を除いた価額)が100万円以上」の資産とし、これを取得した場合には「当該課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間は、免税事業者となることはできません」としている。価額は税抜きで見る。

資本金や売上の要件を満たさなくなっても、この3年の期間が終わるまでは免税事業者に戻らない。設備投資の時期がこの期間に入るかどうかで、その後の課税期間の区分が変わることになる。

判定の早見表

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期首の資本金・出資の金額 判定対象者の課税売上高等 設立1期目・2期目の区分
1,000万円以上 課税事業者(新設法人)
1,000万円未満 5億円超 または 50億円超に該当 課税事業者(特定新規設立法人)
1,000万円未満 いずれにも該当しない 免税事業者(ただし特定期間・登録・相続等の事由で外れる)

免税事業者に当たる場合でも、適格請求書発行事業者の登録を受ければその時点から課税事業者になる。登録の手続と効力の発生時期はインボイス発行事業者の登録手続きフローで確認できる。課税事業者になった後の計算方法の区分は原則課税と簡易課税の制度判定基準、2割特例を含む納税額の比較は2割特例・簡易課税・本則課税の納税額比較シミュレータに分けている。

なお条文そのものは消費税法(e-Gov法令検索)で参照できる。第12条の2が新設法人、第12条の3が特定新規設立法人の規定である。

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