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【2026年9月版】相続税の評価特例が使える特定地域は熊本県全域

令和8年熊本地震で相続税・贈与税の評価特例(措法69の6)が使える特定地域は熊本県全域。申請なしで申告期限が延びる指定地域4市町とは範囲が違う。対象の取得時期と申告期限を原典で整理。

令和8年熊本地震で相続税・贈与税の評価特例が使える特定地域は熊本県の県内全域である。申告・納付の期限が申請なしで延びる指定地域は八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町の4市町で、この2つは重なっていない。特例の対象は相続開始が令和7年9月28日から令和8年7月27日までの案件、贈与は令和8年1月1日から同日まで。申告期限は令和9年5月28日となる。

範囲と期限を示しているのは国税庁「令和8年熊本地震により被害を受けられた方へ(相続税・贈与税に係る財産評価の概要)」で、令和8年8月10日現在の法令等に基づくもの。

特定地域は県内全域、指定地域は4市町で範囲が違う

同じ地震の措置に「特定地域」と「指定地域」という2つの地理的範囲がある。前者は財産評価の特例(租税特別措置法69条の6・69条の7)の対象範囲、後者は申告・納付期限の地域指定(令和8年国税庁告示第21号)の対象範囲で、根拠条文も定め方も別である。

範囲の名称 対象地域 及ぶ範囲 根拠
特定地域 熊本県 県内全域 特定土地等・特定株式等の評価特例 措法69の6①・被災者生活再建支援法3①
指定地域 八代市、宇土市、宇城市、八代郡氷川町 申請なしの申告・納付期限の延長 令和8年国税庁告示第21号

特定地域は条文上「被災者生活再建支援法第3条第1項の規定の適用を受ける地域」と定められている。熊本県は同法施行令第1条第3号に該当するとして本県全域への適用を決定しており、その結果として特定地域が県内全域になる。財務大臣が地域を指定して告示する仕組み(措法69の6④)は、支援法の適用がない場合の受け皿であって、今回は動いていない。

被相続人の住所地が熊本市や人吉市であれば、期限の自動延長は受けられない一方で、評価特例の対象にはなる。災害で申告・納付が間に合わないときの国税の期限延長で扱った3つの指定のうち、地域指定はこの4市町だけを指す。

対象になるのは発生日前に取得し、発生日以後に期限が来る財産

特例の入口は3つの条件が同時に成り立つことで、いずれか1つでも外れると使えない。特定非常災害発生日は令和8年7月28日である。

①取得の時期 特定非常災害発生日より前に相続・遺贈または贈与で取得したもの
②申告期限 その相続・贈与に係る申告書の提出期限が令和8年7月28日以後に到来すること
③所有 令和8年7月28日において所有していた財産であること

②を相続税の10か月から逆算すると、対象になる相続開始日は令和7年9月28日から令和8年7月27日までの範囲に収まる。贈与税は翌年3月15日が期限なので、令和8年1月1日から令和8年7月27日までの贈与が対象となる。

税目 対象になる取得時期 特例後の申告期限
相続税 令和7年9月28日 〜 令和8年7月27日 令和9年5月28日
贈与税 令和8年1月1日 〜 令和8年7月27日 令和9年5月28日

令和8年7月28日以後に開始した相続は、この特例の対象外である。発生日以後に取得した財産には別の取扱いがあり、後段で扱う。

特定株式等は動産等が保有資産の10分の3以上の法人の株式

対象財産は特定土地等と特定株式等の2つ。土地等は特定地域内にある土地または土地の上に存する権利で、所在地だけで決まる。株式等の側は法人の資産構成で決まるので、判定に手が要る。

特定土地等 特定地域内にある土地・土地の上に存する権利
特定株式等 取得の時において、特定地域内にあった動産等の価額が保有資産の合計額の10分の3以上である法人の株式・出資
動産等の範囲 動産(金銭・有価証券を除く)、不動産、不動産の上に存する権利、立木
除かれるもの 金融商品取引所に上場されている株式など一定のもの

分母は保有資産の合計額なので、熊本県内に工場や倉庫を持つ法人でも、県外資産の比重が大きければ10分の3に届かない。金銭と有価証券が動産等から外れる点も分子を押し下げる。取引相場のない株式の評価見直しで扱った類似業種比準方式・配当還元方式の話とは別枠の判定である。

評価額は令和8年分の路線価等に調整率を乗じる

特例を使うと、相続税法22条の「取得の時の時価」ではなく、特定非常災害の発生直後の価額で課税価格を計算できる。土地等の具体的な計算は次の形をとる。

発生直後の価額 = 令和8年分の路線価等 × 調整率

この調整率は国税庁ホームページで後日公開される予定とされており、公開予定日も現時点では示されていない。調整率が出るまで、特例を適用した評価額そのものは計算できない。路線価等の側は令和8年分がすでに公表されているので、待っているのは乗率だけになる。

家屋には調整率を使わない。固定資産税評価額に基づいて評価し、令和7年中に取得した家屋は令和7年度の、令和8年中に取得した家屋は令和8年度の評価額を用いる。

申告期限は令和9年5月28日、相続人等の全員に及ぶ

措法69の8は、69の6の特例を使える者がいる場合に申告期限そのものを動かす。基準になる「特定日」は、国税通則法11条で延長された期限と、発生日の翌日から10か月を経過する日のいずれか遅い日である。

納税地 相続税・贈与税の申告・納付期限
指定地域内(4市町) 国税庁告示で定める日と令和9年5月28日のいずれか遅い日
指定地域外 令和9年5月28日

指定地域の側は「別途国税庁告示により定める日まで」とされているだけで、その日はまだ告示されていない。したがって4市町に納税地がある案件の期限は、令和9年5月28日以後のどこかという形でしか確定しない。

効き方で注意が要るのは相続税である。同一の被相続人から財産を取得した者のうちに69の6を適用できる者が1人でもいれば、その相続人等の全員の申告期限が延長される。熊本県内に土地を相続した子が1人いれば、県外に住み県外財産だけを取得した他の相続人も同じ期限になる。

2026-07-28
特定非常災害発生日。この日に所有していた財産が特例の対象になる
2026-08-07
指定政令が公布・施行され、令和8年熊本地震による災害が特定非常災害に指定された
2026-08-10
特定地域を熊本県全域とする国税庁リーフレットの基準日
2026-12-31
発生日以後の取得で、土地等を発生直後の価額に準じて評価できる期間の末日
2027-03-31
災害救助法適用区域に住所があった相続人の、承認・放棄をすべき期間の伸長後の末日
2027-05-28
特例を適用できる場合の相続税・贈与税の申告期限

適用は申告書に「受けようとする旨」の記載がある場合に限られる

措法69の6第3項は、申告書または更正請求書にこの規定の適用を受けようとする旨の記載がある場合に限り適用すると定める。記載を欠いた場合は、税務署長がやむを得ない事情があると認めるときを除いて適用されない。

書類 記載による適用
期限内申告書 対象
期限後申告書 対象
修正申告書 対象
更正請求書(通則法23③) 対象
記載のない申告書 対象外(税務署長がやむを得ない事情を認めるときを除く)

贈与税の69の7も、この第3項を読み替えて準用する。読み替え後は相続税法28条の申告書が対象になる。

発生日以後に取得した財産は準用と原状回復費用の控除

令和8年7月28日から令和8年12月31日までの間に相続等または贈与で取得した財産には、条文の特例ではなく評価上の取扱いが用意されている。

土地等 特定地域内にあるものは、発生直後の価額(路線価等×調整率)に準じて評価できる
物理的被害がある土地等 課税時期に原状回復していない場合、原状回復費用相当額を控除した価額で評価できる
原状回復費用相当額 原状回復費用の見積額の80%相当額、または宅地造成費相当額から算定した金額
家屋 被災後の現況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合、令和8年度の固定資産税評価額に軽減・免除の割合を用いた算式で評価できる
株式等 発生日から同日を含む事業年度の末日までに取得したものは、類似業種比準方式・配当還元方式で評価するときに特定株式等の方法に準じて計算できる

修理・改良等を行っている家屋は、上の算式で出した金額に、発生直後から課税時期までに投下した費用の70%を加算する。

財産評価とは別に、相続税・贈与税そのものを減免する経路として災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律がある。所得税側の区分は雑損控除と災害減免法の要件比較と災害損失の繰越期間は3年、特定非常災害は5年に整理している。

Q1熊本県外に納税地がありますが、熊本県内の土地を相続しました。期限は延びますか

延びる。措法69の8は指定地域の内外で期限の定め方を分けており、指定地域外に納税地がある場合の相続税・贈与税の申告・納付期限は令和9年5月28日とされている。

Q2特定非常災害法4条の免責は令和8年11月27日までとされていますが、国税の申告期限もこの日ですか

同条第4項は、履行期限までに履行されなかった場合について他の法令に別段の定めがあるときはその定めるところによると規定している。国税の期限には国税通則法11条という別段の定めがあり、相続税・贈与税の期限は上記の措法69の8で決まる。

原典対応表

節 原典 確認日
特定地域の範囲・取得時期・調整率・家屋と株式等の評価・発生日以後の取扱い 国税庁 令和8年熊本地震により被害を受けられた方へ(相続税・贈与税に係る財産評価の概要)(令和8年8月10日現在の法令等) 2026-09-11
指定地域の4市町・特定地域は熊本県全域・申告期限の分岐 国税庁「令和8年熊本地震」により被災された納税者の相続税及び贈与税に係る申告・納付等の期限の延長について(令和8年8月19日) 2026-09-11
特定土地等・特定株式等の定義、適用を受けようとする旨の記載要件、財務大臣の告示 租税特別措置法第69条の6・第69条の7・第69条の8(令和8年7月23日施行版) 2026-09-11
特定非常災害発生日・相続の承認放棄の熟慮期間・免責期限 総務省 令和8年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令の公布・施行(令和8年8月7日) 2026-09-11
被災者生活再建支援法の県内全域適用 熊本県 令和8年熊本地震に係る被災者生活再建支援金について 2026-09-11

【記事情報】

・免責事項: 本記事は公開・更新時点の法令・公的資料に基づき、一般的な制度解説として編集しています。個別の税務判断は税務署または税理士へご確認ください。調整率の公表後に評価額の計算例を追記する予定です。

・AI利用: 本記事は生成AIを用いて原典から構成し、公開前に一次資料と照合しています。

・監修: 本記事は税理士等の監修を受けていません。掲載しているのは原典に書かれている要件と効果であり、解釈・評価・助言は行いません。

【記事情報】
公開 / 更新
2026-09-11 / 2026-09-11
監修
監修者は置いていない。運営者が原文と照合して掲載
免責
公表済みの法令・Q&Aの事実を確認日時点で整理したもの。個別の事案への適用の可否・選択の助言は含まない
AI利用
下書きと表の整形に生成AIを利用。公開前に運営者が原文と照合