【2026年9月版】被災事業者の消費税の届出特例|指定日の3区分と対象になる届出
被災事業者が消費税の課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書を指定日までに提出すると、課税期間の初日の前日に提出したものとみなされる。令和8年熊本地震については国税庁告示第22号が指定日の3区分を置いた。
被災事業者が消費税の課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書を指定日までに提出すると、適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなされる。指定日は事業者の区分ごとに別々に定まり、令和8年熊本地震については国税庁告示第22号がその決め方を置いた。対象となる課税期間は、被災日を含む課税期間以後である。
指定日は事業者の区分ごとに3通りに分かれる
租税特別措置法第86条の5がいう「指定日」は、国税庁長官が特定非常災害の状況と国税通則法第11条による申告期限の延長の状況を勘案して別に定める日である。令和8年熊本地震については、令和8年8月12日付の国税庁告示第22号が3区分を置いた。
| 事業者の区分 | 指定日 |
|---|---|
| 国税通則法施行令第3条第1項の地域指定を受けた事業者(同条第3項の適用を受けたものを除く) | 国税庁告示第21号にいう「別途国税庁告示で定める期日」(指定期日) |
| 同条第3項の個別指定を受けた事業者 | 同項に基づき税務署長が指定した日 |
| これらの事業者でないもの | 指定期日を勘案して別途国税庁告示で定める日 |
地域指定の対象は熊本県八代市、宇土市、宇城市および八代郡氷川町の4市町で、令和8年8月12日付の国税庁告示第21号が、令和8年7月28日以降に到来する期限を別途国税庁告示で定める期日まで延長するとした。個別指定は、所轄税務署長へ「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出して期日を指定された事業者を指す。3区分目には、納税地にある事務所等は被害を受けていないが指定地域内にある工場等が被害を受けた事業者が当たると、国税庁のリーフレットが例示している。どの区分に当たるかで指定日そのものが変わる。地域指定と個別指定の関係は国税の期限延長の3つの指定に整理している。
区分1の指定日である指定期日は、告示第22号では定まらない。告示第21号がいう別途の告示で定まる。
同じ地震で相続税・贈与税の財産評価の特例が使える「特定地域」は熊本県の県内全域で、期限延長の地域指定(八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町)とは範囲が異なる。評価特例の対象になる財産と申告期限は令和8年熊本地震の相続税・贈与税の評価特例と特定地域にまとめている。
指定日までに出せば「課税期間の初日の前日」に出したものとみなされる
措置法第86条の5第1項は、被災事業者が消費税法第9条第4項の届出書を指定日までに納税地の所轄税務署長へ提出したときは、その届出書を適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなすと定める。事業を開始した日の属する課税期間その他政令で定める課税期間について、その末日の翌日以後に提出した場合は、その課税期間の末日に提出したものとみなされる。
| 消費税課税事業者選択届出書 | 消法9④/措法86の5① |
|---|---|
| 消費税課税事業者選択不適用届出書 | 消法9⑤/措法86の5③ |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 消法37①/措法86の5⑩ |
| 消費税簡易課税制度選択不適用届出書 | 消法37⑤/措法86の5⑫ |
| 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書 | 消法57の2⑩一/措法86の5⑬ |
国税庁は、これらの届出書を提出するときに「参考事項」欄へ「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨を記載するよう案内している。様式そのものは通常の届出書と同じもので、専用の様式は用意されていない。届出書と申請書の様式は様式一覧と提出先の対応表にまとめている。
2年継続の縛りと調整対象固定資産の提出制限が外れる
課税事業者の選択も簡易課税制度の選択も、通常は2年継続して適用したあとでなければやめる旨の届出書を出せない。この特例では、その制限が働かない。
| 課税事業者選択の2年継続(消法9⑥⑦) | 適用しない(措法86の5②) |
|---|---|
| 簡易課税選択の2年継続(消法37⑥) | 適用しない(措法86の5⑪) |
| 新設法人・特定新規設立法人の調整対象固定資産の特例(消法12の2②・12の3③) | 適用しない(措法86の5④) |
| 高額特定資産の仕入れ等をした場合の納税義務の特例(消法12の4①②) | 適用しない(措法86の5⑤⑥) |
| 高額特定資産に係る簡易課税の届出制限(消法37③三・四) | 適用しない(措法86の5⑧⑨) |
課税事業者を選択した事業者が、課税事業者となった日から2年を経過する日までに開始した課税期間中に調整対象固定資産(棚卸資産以外の固定資産で税抜100万円以上のもの)を取得し、その課税期間の確定申告を一般課税で行う場合も、通常は一定期間、選択をやめる旨の届出書と簡易課税制度選択届出書を提出できない。被災日前または指定日までに課税事業者選択届出書を提出した被災事業者は、被災日を含む課税期間以後の課税期間から、これらの届出書を提出できる。
高額特定資産については、被災日前に仕入れ等を行っていた場合だけでなく、被災日から指定日以後2年を経過する日の属する課税期間の末日までに仕入れ等を行った場合も、措置法第86条の5第5項の範囲に入る。新設法人・特定新規設立法人の納税義務の判定そのものは新設法人・特定新規設立法人の判定フローにある。
期限延長を受けていない事業者は、届出書の提出が適用の条件になる
措置法第86条の5第4項から第6項までは、国税通則法第11条の期限延長の適用を受けていない事業者について、届出書の提出を適用の条件としている。届出書を出さなければ、条文の効果は生じない。
| 特定非常災害による消費税法第12条の2第2項(第12条の3第3項)不適用届出書 | 基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日のいずれか遅い日まで(措法86の5④) |
|---|---|
| 特定非常災害による消費税法第12条の4第1項(第2項)不適用届出書 | 高額特定資産の仕入れ等の日等の属する課税期間の末日と指定日のいずれか遅い日まで(措法86の5⑤⑥) |
提出先は納税地を所轄する税務署長である。国税庁の手続案内は、申請書をPDFに変換してe-Taxソフトのイメージデータ送信で提出する方法を示しており、書面で作成して持参または送付する方法も認めている。
登録の取消しを求める届出は、提出した日の翌日に効力が生じる
被災事業者であるインボイス発行事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者が、指定日までに登録の取消しを求める旨の届出書を提出した場合、その提出があった日の翌日に登録は効力を失う(措法86の5⑬)。通常の取消しは課税期間の末日を基準に効力が生じるため、失効の時点が動く。通常の取消届出の効力発生時期は登録の取消しがいつ効力を生じるかで扱っている。
課税事業者選択届出書を提出しているインボイス発行事業者が指定日までに課税事業者選択不適用届出書を提出したときは、登録の取消しを求める旨の届出書を提出したものとみなされ、提出日の翌日に登録も取り消される(措法86の5⑭)。国税庁のリーフレットは、この場合に登録の取消しのみでは免税事業者にならないこと、および登録を受けてから取消しを受けるまでの間の取引について交付したインボイス等は有効で、取引先はそれに基づき仕入税額控除を行えることを記載している。
この特例が動かさない手続もある
| 事業者・手続 | 取扱い | 原典 |
|---|---|---|
| 指定地域内に納税地を有する被災事業者 | 対象(指定日は指定期日) | 国税庁告示第22号 |
| 税務署長から個別に期日を指定された被災事業者 | 対象(指定日は指定された日) | 国税庁告示第22号 |
| 指定地域外で被災した事業者 | 対象(指定日は別途告示で定める日) | 国税庁告示第22号 |
| 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるインボイス発行事業者 | 登録の取消しを求める届出の特例は及ばない | 措法86の5⑬ |
| 災害等があった場合の簡易課税制度の適用に関する特例承認申請 | 届出の特例とは別の手続(消法37の2) | 消法37の2 |
| 仮決算による中間申告書を提出済みの場合 | その中間申告書の内容を遡って変更することは要しない | 国税庁リーフレット |
簡易課税の特例承認申請は、災害等により被害を受けた課税期間について税務署長の承認を受ける手続で、届出の特例とは条文も手続も別である。簡易課税そのものの判定は事業区分の判定フローにある。
被災日と、帳簿書類を失った場合の取扱い
Q1被災日とはいつを指すか。
国税庁のリーフレットは、被災日を「事業者が令和8年熊本地震により被災事業者となった日」としている。届出の特例の対象となる課税期間は、この被災日を含む課税期間以後の課税期間である。
Q2災害で帳簿やインボイスを失った場合、仕入税額控除はどうなるか。
国税庁のリーフレットは、被災により課税仕入れに係る帳簿書類を消失した場合や、売手が被災してインボイスを交付できず買手がそれを保存できなかった場合について、帳簿書類を保存することなく仕入税額控除を行うことができると記載している。
原典対応表
| 節 | 原典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 指定日の3区分 | 国税庁告示第22号(令和8年8月12日) | 2026-09-06 |
| 指定地域・延長される期限 | 国税庁告示第21号(令和8年8月12日) | 2026-09-06 |
| みなし提出・対象となる届出・各種制限の不適用・登録の失効 | 租税特別措置法第86条の5(e-Gov法令検索) | 2026-09-06 |
| 参考事項欄への記載・被災事業者と被災日・仮決算による中間申告・帳簿書類を消失した場合 | 国税庁「消費税の届出等に関する特例について」および同ページ掲載のリーフレット(令和8年8月) | 2026-09-06 |
| 不適用届出書の提出時期と提出方法 | 特定非常災害による消費税法第12条の2第2項(第12条の3第3項)不適用届出手続・同第12条の4第1項(第2項)不適用届出手続 | 2026-09-06 |
- 公開 / 更新
- 2026-09-06 / 2026-09-27
- 監修
- 監修者は置いていない。運営者が原文と照合して掲載
- 免責
- 公表済みの法令・Q&Aの事実を確認日時点で整理したもの。個別の事案への適用の可否・選択の助言は含まない
- AI利用
- 下書きと表の整形に生成AIを利用。公開前に運営者が原文と照合