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災害で損失が出た法人の欠損金|白色申告でも繰り越せる「災害損失金額」の範囲

青色申告書を提出していない事業年度に生じた法人の欠損金でも、災害損失金額に相当する部分は10年間繰り越せる。法人税法58条が定める対象資産と明細書の添付要件、そして特定非常災害による繰越期間の延長が法人には無いことを、条文に沿って整理する。

青色申告書を提出していない事業年度に生じた法人の欠損金でも、災害損失金額に相当する部分は繰り越せる。根拠は法人税法58条1項で、棚卸資産・固定資産・政令で定める繰延資産が震災・風水害・火災その他政令で定める災害により受けた損失の額に限られる。繰越期間は青色欠損金と同じ10年である。ただし欠損金額の生じた事業年度の申告書に計算明細を記載した書類の添付がなければ、災害損失金額はないものとして扱われる。

繰越期間と適用要件を定めているのは法人税法第五十七条・第五十八条で、個人との違いは所得税法第七十条・第七十条の二にある(2026年9月時点)。

繰越期間は法人が10年、個人が3年

法人税法57条1項は、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度に生じた欠損金額を、その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入すると定める。損金算入の限度は、同項ただし書により所得の金額の50%に相当する金額まで。

所得税側はこれと桁が違う。所得税法70条1項の純損失の繰越控除は前年以前3年内で、しかも「その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る」という括弧書きが付く。同じ「災害で出た損失を翌期以降へ送る」という話でも、法人と個人では出発点の年数が3倍以上離れている。

区分 繰越期間 所得からの控除限度 根拠
法人の欠損金 10年 所得の50% 法法57①
法人の欠損金(中小法人等) 10年 所得の金額(全額) 法法57⑪一
個人の純損失 3年 総所得金額等から控除 所法70①
個人の純損失(特定非常災害) 5年 総所得金額等から控除 所法70の2

中小法人等の読み替えは57条11項1号イにある。資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人(大通算法人などを除く)、資本もしくは出資を有しない法人、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等が該当し、これらについては57条1項ただし書の「所得の金額の百分の五十に相当する金額」が「所得の金額」と読み替えられる。被災して大きな欠損が出た年に、資本金1億円が控除限度の分かれ目になる。

57条1項が求めているのは青色申告書ではなく確定申告書の連続提出

繰越控除の適用要件は57条10項にある。欠損金額の生じた事業年度について確定申告書を提出し、その後において連続して確定申告書を提出していること、そして欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存していること。条文はここで「青色申告書」と書いていない。

青色か白色かの線を引いているのは、57条ではなく58条のほうである。58条1項は、青色申告書を提出する事業年度でない事業年度に生じた欠損金額について57条1項を適用するときは、そのうち災害損失金額を超える部分の金額を「ないものとする」と定める。白色の年度で欠損金が全部消えるのではなく、災害損失金額までは残る、という構造になっている。

白色の年度から拾えるのは棚卸資産・固定資産・繰延資産の損失だけ

58条1項がいう災害損失金額の範囲は、条文上こう絞られている。

対象となる資産 棚卸資産、固定資産、政令で定める繰延資産
損失の原因 震災、風水害、火災その他政令で定める災害
金額 これらの資産について生じた損失の額で政令で定めるもの
繰越の扱い 災害損失金額を超える部分はないものとされる(法法58①)

売掛金の回収不能や、災害による売上の落ち込みそのものは、この列のどこにも入らない。被災した年度の欠損金額が1億円あっても、そのうち工場設備と在庫の滅失が4,000万円であれば、白色の年度から10年間繰り越せるのは4,000万円までで、残りは繰越しの対象から外れる。

58条2項はもう一段の手当てをしている。災害損失金額に達するまでの金額については、57条3項・4項および57条の2の規定を適用しない。支配関係の生じた事業年度前の欠損金を切り捨てる規定が、災害損失金額の部分には及ばないということである。

計算明細を添付しなければ災害損失金額はゼロとして扱われる

58条3項がこの制度のいちばん狭い出口になっている。欠損金額の生じた事業年度の確定申告書、修正申告書または更正請求書に、災害損失金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がない場合、その事業年度の災害損失金額はないものとして1項・2項を適用する。

白色申告の法人が被災した年度に明細を付け忘れると、58条1項の「災害損失金額を超える部分はないものとする」だけが残ることになる。10年という期間は動かないのに、繰り越す金額のほうが消える。申告期限が延長される災害では、延長された期限までに提出する申告書がこの添付の機会になる。期限延長そのものの仕組みは災害で申告・納付が間に合わないときの国税の期限延長に整理してある。

特定非常災害を理由に法人の繰越期間を延ばす規定は存在しない

法人税法の条文に「特定非常災害」の語は現れない。租税特別措置法には87か所現れるが、そのいずれも前後300字以内に「欠損金」の語を伴わない。法人の欠損金の繰越期間を特定非常災害を理由に延長する規定は、どちらの法律にも置かれていない。

延長があるのは個人の側だけで、所得税法70条の2(特定非常災害に係る純損失の繰越控除の特例)が、特定非常災害発生年に生じた純損失金額などについて繰越期間を翌年以後5年内とする。ただしこの特例には「特定非常災害発生日の属する年の年分の所得税につき青色申告書を提出している者に限る」という限定が付いている。個人側の区分と根拠条文は災害損失の繰越期間は3年、特定非常災害は5年で扱っている。

白色の個人事業主にまったく道が無いわけではない。所得税法70条2項2号の被災事業用資産の損失は、1項のような青色申告書の限定を受けずに3年内の繰越しの対象になる。白色でも災害分は拾えるという点では、法人の58条と同じ発想の規定が所得税側にも置かれている。

白色の被災法人と中小法人等では、止まる場所が違う

立場 適用 原典
青色申告書を提出している事業年度に欠損金が生じた法人 欠損金額の全額が10年の繰越しの対象 法法57①
青色申告書を提出していない事業年度に欠損金が生じた法人 災害損失金額を超える部分は対象外 法法58①
同・計算明細を記載した書類の添付がない場合 災害損失金額はないものとして扱う 法法58③
資本金1億円以下の普通法人など(中小法人等) 控除限度が所得の金額まで(50%制限の読み替え) 法法57⑪一
特定非常災害の指定を受けた災害で被災した法人 繰越期間の延長規定なし 法人税法・措置法に該当条文なし
特定非常災害発生年に青色申告書を提出している個人 繰越期間は翌年以後5年内 所法70の2
青色申告書を提出していない個人の被災事業用資産の損失 3年内の繰越しの対象 所法70②二

被災した法人の欠損金をどう扱うかは、まず青色の年度かどうかで分かれ、次に明細の添付があるかで分かれる。

繰越期間そのものは、どちらに転んでも10年から動かない。

Q1災害損失金額の明細を後から出すことはできますか

法人税法58条3項は、確定申告書だけでなく修正申告書または更正請求書への添付も条文上の対象としている。

Q2災害損失金額に当たるかどうかは資産の種類で決まりますか

法人税法58条1項は資産を棚卸資産・固定資産・政令で定める繰延資産に限り、原因を震災・風水害・火災その他政令で定める災害に限っている。両方に当てはまる損失の額のうち政令で定めるものが災害損失金額になる。

原典対応表

節 原典 確認日
繰越期間10年・損金算入限度額50%・適用要件(確定申告書の連続提出と帳簿書類の保存)・中小法人等の読み替え 法人税法第五十七条(欠損金の繰越し)1項・10項・11項 2026-09-20
災害損失金額の範囲・57条3項4項および57条の2の不適用・明細書の添付要件 法人税法第五十八条(青色申告書を提出しなかつた事業年度の欠損金の特例)1項〜3項 2026-09-20
個人の純損失の繰越控除3年・青色申告書の限定・被災事業用資産の損失 所得税法第七十条(純損失の繰越控除)1項・2項 2026-09-20
特定非常災害に係る純損失の繰越控除の特例(5年・青色申告書の限定) 所得税法第七十条の二 2026-09-20
法人税法・租税特別措置法に法人の欠損金繰越期間を延長する特定非常災害の規定がないこと 租税特別措置法および法人税法の法令全文(e-Gov法令API) 2026-09-20

災害に関連する所得税側の控除の選び分けは雑損控除と災害減免法の要件比較に、被災事業者の消費税の届出は被災事業者の消費税の届出特例にまとめている。


【記事情報】

・免責事項: 本記事は公開・更新時点の法令・公的資料に基づき、一般的な制度解説として編集しています。個別の税務判断は税務署または税理士へご確認ください。政令で定める繰延資産・政令で定める災害・政令で定める損失の額の具体的範囲は、法人税法施行令まで下りて扱っていません。

・AI利用: 本記事は生成AIを用いて原典から構成し、公開前に一次資料と照合しています。

・監修: 本記事は税理士等の監修を受けていません。掲載しているのは原典に書かれている要件と効果であり、解釈・評価・助言は行いません。

【記事情報】
公開 / 更新
2026-09-20 / 2026-09-20
監修
監修者は置いていない。運営者が原文と照合して掲載
免責
公表済みの法令・Q&Aの事実を確認日時点で整理したもの。個別の事案への適用の可否・選択の助言は含まない
AI利用
下書きと表の整形に生成AIを利用。公開前に運営者が原文と照合