青色申告特別控除65万円の要件判定フロー|令和9年分からe-Tax送信が必須になる
青色申告特別控除は令和8年分まで65万円・55万円・10万円の三段。令和9年分以後は55万円の区分が条文から消え、65万円はe-Tax送信が必須になり、優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存を満たすと75万円になる。租税特別措置法25条の2の各項を2時点で並べ、同じ入力で控除額を判定する。
青色申告特別控除は令和8年分まで65万円・55万円・10万円の三段で、65万円は複式簿記に加えて優良な電子帳簿かe-Tax送信のどちらかを満たせば足りる。令和9年分以後は55万円の区分が条文から消え、65万円はe-Tax送信が必須になる。優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存を満たす場合は75万円。根拠は租税特別措置法25条の2。
条文の原文はe-Gov法令検索の租税特別措置法25条の2(令和9年1月1日施行)で読める。以下の判定はすべて同条の各項による。
65万円・55万円の枝に入るのは事業所得と事業的規模の不動産所得だけ
ここで「令和8年分」と呼ぶのは令和8年8月12日に施行されていた条文、「令和9年分以後」は令和8年法律第12号による改正後の条文(施行日2027年1月1日)を指す。
65万円・55万円の枝は「不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営むもの」に限られる。不動産の貸付けが事業に至らない規模であれば、残るのは10万円の枝だけになる。所得税法67条1項の現金主義による所得計算の特例を受けている年分は、65万円・55万円・75万円のいずれも適用対象外になる。青色申告の承認を受けていない年分は同条の対象外で、控除額は0円になる。
控除額は条文が並べる2つの金額のうち低い方なので、不動産所得・事業所得・山林所得の合計額が控除額を下回るときは、その合計額が限度になる。「正規の簿記の原則」に従った記帳は、条文では「一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合」と書かれている。以下では複式簿記かどうかで置いている。
条件を入れると令和8年分と令和9年分以後の控除額が並ぶ
青色申告の承認
所得の区分
記帳の方法
現金主義の特例(所法67条1項)
貸借対照表等を添付して期限内に提出
確定申告期限までにe-Taxで送信
電子帳簿等の状況
前々年分の総収入金額(円)
青色申告特別控除の額
—
条文上の金額と根拠項だけを表示します。どの方法を選ぶべきかは示しません。
令和8年分と令和9年分で答えが割れる場所
割れ目は e-Tax送信 が任意か必須か
現行の条文では、55万円の枝(3項)に対して4項が「五十五万円」を「六十五万円」と読み替える構造になっており、読み替えの要件は1号(優良な電子帳簿)と2号(e-Tax送信)のいずれかである。つまり書面で申告しても、優良な電子帳簿の要件を満たしていれば65万円に届く。
改正後は3項が消えて、65万円が4項の本体になる。そのうえで7項が「第四項の規定は、…電子情報処理組織を使用して…情報を送信した場合に限り、適用する」と書く。いずれかだった要件が、限りという言い切りに変わる。優良な電子帳簿は65万円の代替ではなくなり、5項で75万円へ読み替えるための上乗せ要件へ移る。
令和8年分 = 複式簿記 +(優良な電子帳簿 または e-Tax送信)→ 65万円
令和9年分 = 複式簿記 + e-Tax送信 → 65万円 +(優良な電子帳簿 または 電子取引データの保存)→ 75万円
55万円という区分が条文から消える
改正後の条文を頭から読むと、1項が10万円、4項が65万円、5項が75万円で、55万円という金額はどこにも出てこない。書面で申告している人が令和9年分でどうなるかは、4項に該当しないという一点で決まる。
| 同じ条件 | 令和8年分 | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 複式簿記・書面で期限内提出 | 55万円 | 10万円 |
| 複式簿記・e-Tax送信 | 65万円 | 65万円 |
| 複式簿記・書面・優良な電子帳簿 | 65万円 | 10万円 |
| 複式簿記・e-Tax送信・優良な電子帳簿 | 65万円 | 75万円 |
| 簡易な簿記(前々年収入1,000万円以下) | 10万円 | 10万円 |
| 簡易な簿記(前々年収入1,000万円超・事業) | 10万円 | 0円 |
3行目が読みにくいところで、令和8年分は優良な電子帳簿だけで65万円に届くのに、令和9年分は同じ帳簿を維持していても書面申告なら10万円まで落ちる。帳簿の水準ではなく提出の方法で45万円から55万円の差がつく。根拠は租税特別措置法25条の2 第1項・第2項・第4項・第5項・第7項(令和9年1月1日施行)。
75万円になる2つの枝
5項は、4項の要件を満たしたうえで帳簿書類の電磁的記録の備付けと保存を行っている場合に、2つの枝のどちらかで75万円への読み替えを認めている。
| 第1号 | 帳簿書類の電磁的記録の備付け・保存が、電子帳簿保存法8条4項の財務省令で定める要件を満たしている場合。国税庁の資料では「優良な電子帳簿」と呼ばれている区分にあたる |
|---|---|
| 第2号 | その年の電子取引の取引情報に係る特定電磁的記録の保存について、電子帳簿保存法8条5項の要件を満たすために必要な措置を講じ、かつ実際にその特定電磁的記録を保存している場合。国税庁の資料では「デジタルシームレス保存」と呼ばれている |
第1号が求める要件の中身は電子帳簿保存法にあり、検索機能の確保が独立した論点になる。3項目を順に見る手順は電子帳簿保存法の検索要件 充足判定フローに、区分ごとの義務と猶予措置の関係は電子帳簿保存法の区分×義務×猶予措置の横断整理にまとめてある。第2号が指す電子取引データの保存要件は電子取引データの保存要件チェックリストで扱っており、こちらは全事業者に義務づけられている保存そのものである。
どちらの枝も、届出書を適用を受ける年分の確定申告期限までに提出することが前提になる。届出書の名称と期限は国税庁のパンフレットに載っている。根拠は租税特別措置法25条の2 第5項第1号・第2号と電子帳簿保存法8条4項・5項。
簡易な簿記で控除が0円になる場合
改正後の2項は、10万円の控除そのものを不適用にする規定である。対象は不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営む者で、その年の前々年分の当該所得に係る総収入金額が1,000万円を超える場合。4項(65万円)に該当する場合は2項が働かないので、複式簿記でe-Tax送信をしていればこの規定には触れない。
令和9年分の10万円が0円になる条件 = 事業を営む + 前々年分の総収入金額 > 1,000万円 + 4項に該当しない
条文は「千万円を超えること」と書いているので、ちょうど1,000万円は不適用に当たらない。境界の1円で結論が変わる。
2項の括弧書きは、所得税法67条1項の現金主義の特例を受けている者を対象から外している。また対象が「事業を営むもの」に限られるため、不動産の貸付けが事業に至らない規模の場合も2項の外にある。この2つに当たる場合は、総収入金額が1,000万円を超えていても10万円が残る。
承認申請は3月15日まで、新規開業は2か月以内
控除額の判定に入る前提として、その年分について青色申告の承認を受けている必要がある。承認申請の期限は所得税法144条にあり、金額の区分にかかわらず共通である。
| 承認申請(原則) | 承認を受けようとする年の3月15日まで |
|---|---|
| 承認申請(新規開業・相続承継) | 業務を開始した日、または業務を承継した日から2か月以内 |
| 令和8年分の55万円・65万円 | 確定申告書に適用を受ける旨と控除額の計算に関する事項を記載し、貸借対照表・損益計算書等を添付して期限内に提出。e-Tax送信で読み替える場合は送信自体が申告期限までに行われていることが要件 |
| 令和9年分以後の65万円・75万円 | 確定申告期限までにe-Taxで、申告書記載事項と貸借対照表・損益計算書等の明細書記載事項を送信 |
現行6項には括弧書きがあり、e-Tax送信で65万円へ読み替える場合は期限内提出の要件が別の形で読まれる。ただしその送信自体が申告期限までという条件を持つので、期限が消えるわけではない。手続の全体像はタックスアンサー No.2070にある。根拠は所得税法144条、租税特別措置法25条の2 第4項第2号・第6項(現行)と第7項(令和9年1月1日施行)。
省令の個別要件と改正法附則は、この判定の外にある
この判定フローが返すのは条文上の控除額だけで、次の4点は判定できない。
| 財務省令の中身 | 4項の「一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合」と、5項の「財務省令で定める要件」は省令へ委任されている。この判定は複式簿記か否か、優良な電子帳簿の要件を満たすか否かという入力をそのまま受け取っており、省令の個別要件を検査していない |
|---|---|
| 所得金額の計算 | 控除の前段にある不動産所得・事業所得・山林所得の金額そのものは計算していない。所得が控除額を下回る場合の限度計算は、入力された所得額に対してのみ働く |
| 経過措置と適用初年 | 改正法の附則にある適用関係の条番号までは扱わない。令和9年分から適用されるという整理は国税庁のパンフレットの記載による |
| どの方法を採るか | 金額の大小は条文から出るが、記帳方法や申告方法の選択そのものは扱わない。個別の判断は税務署または税理士へ確認が必要になる |
消費税にも同じ形の判定フローがある
条文の分岐だけを同じ形式で並べたものとして、消費税の側に新設法人・特定新規設立法人の納税義務 判定フローがある。
原典対応表
| 節 | 原典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 控除額の三段・55万円の消滅・75万円の2つの枝・0円になる場合・提出期限 | 租税特別措置法25条の2(令和9年1月1日施行)・e-Gov法令検索 | 2026-08-26 |
| 75万円の枝の届出書・令和9年分からの適用 | 国税庁パンフレット | 2026-08-26 |
| 承認申請と提出の期限 | 国税庁 タックスアンサー No.2070 | 2026-08-26 |
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個人事業主向け青色申告ソフトの比較で、記帳から電子申告までの対応範囲を整理しています。
- 公開 / 更新
- 2026-08-26 / 2026-09-27
- 監修
- 監修者は置いていない。運営者が原文と照合して掲載
- 免責
- 公表済みの法令・Q&Aの事実を確認日時点で整理したもの。個別の事案への適用の可否・選択の助言は含まない
- AI利用
- 下書きと表の整形に生成AIを利用。公開前に運営者が原文と照合