この記事でわかること

電子取引データに求められる検索機能は、取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を検索条件に設定できること、日付と金額を範囲指定できること、二以上の記録項目を組み合わせられることの3つである。税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしていれば後ろの2つは不要になり、さらに基準期間の売上高が5,000万円以下か、出力書面を整理して提示できるなら、3つとも不要になる。

本記事は国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月)の記載を判定の順序どおりに並べ直したものであり、独自の解釈や税務判断は含んでいない。自社の取引への当てはめは所轄税務署または税理士に確認いただきたい。要件を「どう作るか」は検索機能の構築手順に分けて整理している。本記事が扱うのは、そもそもどこまで備える義務があるかの判定である。

検索要件は3つ、上から順に落としていく

根拠は電子帳簿保存法施行規則第2条第6項第5号である。一問一答【電子取引関係】の【問48】は、確保すべき検索機能を次の3つとしている。

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番号 内容 通称
取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること 3項目検索
日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること 範囲指定
二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること 組合せ検索

この3つは全事業者に一律で課されるものではない。⑵と⑶が外れる条件と、⑴まで含めて全部が外れる条件がそれぞれ別に定められており、順に当てはめると自社に残る要件が決まる。以下は取引単位ではなく事業者単位の判定である。

ステップ1 ダウンロードの求めに応じられるか

保存している電子データについて、税務職員の質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合、⑵範囲指定と⑶組合せ検索は不要になる(【問48】【問49】)。残るのは⑴の3項目検索だけである。

ここでいう「応じることができるようにしている」は、税務調査の際に求めに応じてデータを提出できる状態を指す。事前の申請や届出は要らない。逆に、求めに応じない意思を示している場合はこの緩和を受けられない。

⑴だけが残る状態は、専用システムがなくても満たせる。一問一答【問50】は2つの方法を挙げている。ひとつは表計算ソフトで取引年月日・取引金額・取引先を入力した索引簿を作り、ファイル名に通し番号を振って対応させる方法。もうひとつはファイル名そのものに記録項目を規則的に入れる方法で、原文の例は「20210131_㈱霞商店_110000」という形である。和暦と西暦の混在は抽出の妨げになるため、どちらかに統一する。

ステップ2 基準期間の売上高は5,000万円以下か

ステップ1を満たしたうえで、判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下であれば、⑴を含む検索機能の確保の要件がすべて不要になる(【問51】)。判定は次のとおり。

  • 個人事業者 電子取引が行われた日の属する年の前々年1月1日から12月31日までの売上高
  • 法人 電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度の売上高

基準期間が1年でない法人は、基準期間の売上高を基準期間に含まれる事業年度の月数で割り、12を掛けて年換算した金額で判定する。基準期間がない新規開業者・新設法人の初年度および翌年度は、この要件が不要になる。

消費税の課税売上高とずれる2か所

判定基準は消費税法第37条の基準期間における課税売上高の例によるとされているが、同じではない。ここが実務で取り違えやすい。

ひとつは非課税売上額の扱い。電帳法側の「売上高」には消費税法上の非課税売上額が含まれる。消費税の免税事業者や簡易課税制度を適用している事業者であっても、非課税売上額を足すと5,000万円を超える場合は、この緩和の対象にならない。

もうひとつは営業外収益と特別利益の扱い。規則第4条第1項が「売上高」と規定していることから、営業外収入や雑収入は含まれない。法人では一般的に売上高・売上収入・営業収入等として計上される営業活動から生ずる収益を指し、一時的に保有する資産の売却額は入らない。個人事業者では商品製品等の売上高、役務提供に係る売上高、農産物の売上高、賃貸料、山林の伐採または譲渡による売上高であり、家事消費高その他の収入は含まれない。金額は税抜で判断する。

なお令和5年度の税制改正前、つまり令和5年12月31日までに行った電子取引については、この基準額は1,000万円である。過年度分をさかのぼって確認するときは基準額が違う。改正前後の区分は区分×義務×猶予措置の横断整理に並べている。

ステップ3 出力書面を日付・取引先ごとに整理して出せるか

売上高が5,000万円を超えていても、電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理し、提示または提出の求めに応じられるようにしている場合は、検索機能の確保の要件がすべて不要になる(【問52】)。整理の方法は取扱通達7-3が3通りを示している。

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方法 整理の順序
A 課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめたうえで、取引先ごとに整理する
B 課税期間ごとに、取引先ごとにまとめたうえで、取引年月日その他の日付の順に整理する
C 書類の種類ごとに、AまたはBと同様の方法で整理する

この方法には運用上の負荷がある。一問一答は、書面に出力する時期に定めはないとしつつ、整理には一定の作業を要するため、遅滞なく提示できるよう日頃から出力して整理しておくことが望ましいとしている。調査の連絡を受けてから出力・整理を始めたのでは、要件を満たしていないと判断される可能性があると明記されている点は見落としやすい。検索機能を確保したデータ保存と、出力書面で管理する保存が取引の様態に応じて混在すること自体は、遅滞なく提示できる限り差し支えないとされている。

3つのステップを上から順に確認する
Q1保存している電子データについて、ダウンロードの求めに応じることができるようにしているか

3ステップを組み合わせた早見表

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ダウンロードの求め 売上高5,000万円以下
または出力書面の整理
確保が必要な検索機能
応じられない ⑴⑵⑶のすべて
応じられる どちらも該当しない ⑴のみ
応じられる いずれかに該当する なし

検索機能が不要になっても、電子データそのものの保存義務は残る。システム概要書の備付け(自社開発システムの場合)、見読可能装置の備付け、改ざん防止措置(規則第4条第1項各号のいずれか)は別途必要である。要件の全体像は電子取引データの保存要件チェックリストで確認できる。

3つとも通らない場合に残る猶予措置

令和5年度の税制改正で創設された猶予措置が規則第4条第3項に置かれている。所轄税務署長が要件に従って保存できなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、税務調査等の際に電子データおよびその出力書面(整然とした形式および明瞭な状態で出力されたものに限る)の提示または提出の求めに応じられるようにしている場合、保存時に満たすべき要件にかかわらず電子データの保存ができる。適用に当たって税務署への事前申請等の手続は要らない。

「相当の理由」として一問一答【問83】が挙げるのは、電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わないといった、要件に従った保存を行うための環境が整っていない事情である。検索機能を満たす準備が間に合わない場合もここに含まれる。

逆に対象外となる場面も明記されている。システム等やワークフローの整備が整っており要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく保存していない場合は適用を受けられない(取扱通達7-12)。改正前から適切に保存できていた事業者が、特段の事情なくシステム更改で検索要件を満たせなくなった場合【問85】、保存スペースの都合で出力書面を廃棄して要件を満たせなくなった場合【問86】も、いずれも相当の理由には当たらないとされている。ただし事業規模の大幅な変更などの事業実態の変化があり、資金繰りや人手不足等の理由で要件に従って保存できなくなった場合は対象になりうる。

この措置は要件を免除するものであって、保存義務を免除するものではない。電子データの保存に代えて出力書面のみを保存する対応は認められず、電子データ自体を保存したうえで、データと出力書面の双方を提示・提出できる必要がある(取扱通達7-13)。また、整備が間に合わないという事情が解消した後の電子取引には適用されない(【問84】)。

判定でつまずきやすい箇所

組合せ検索の範囲 ⑶の「二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること」について、一問一答【問49】は「AかつB」で足り、「A又はB」の組合せは求めないとしている。それぞれの項目で二度検索するのと実質的に変わらないためである。また、一つの項目で検索した結果を対象に別の項目で絞り込む段階的な検索も、結果が同じであることから要件を満たす。

検索できる期間の単位 保存されている電磁的記録は、原則として一課税期間を通じて検索できる必要がある(【問25】)。ただしデータ量が膨大で複数の保存媒体に分けざるを得ない場合、中間決算を組んで半期ごとに帳簿を作成している場合、取引先ごとに指定のEDIやプラットフォームがある場合など、合理的な理由があるときは、保存媒体ごとや一課税期間内の合理的な期間ごとに範囲を指定して検索できれば差し支えないとされている(取扱通達4-9)。

検索に使うシステム 現在使用しているシステムで検索できなくても、変更前のシステムを用いるなどして検索機能が確保されていれば差し支えない(【問24】)。この場合は、検索に使う電磁的記録が要件を満たして保存してある電磁的記録と同一のものであることを確認できるようにしておく必要がある。

電子取引以外の区分、つまり紙で受け取った書類を画像で保存する場合の要件は別系統である。そちらはスキャナ保存の要件と導入フローにまとめている。

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検索要件を満たす機能の有無を製品ごとに見る
3項目検索・範囲指定・組合せ検索のどこまでを製品側で持てるかを比較しています。

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